大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

岡山地方裁判所倉敷支部 昭和48年(ワ)28号 判決

原告

小山公基

被告

堤昭男

主文

被告は、原告に対し金二、九七四、六八六円、およびこれに対する昭和四七年一月一日より支払済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。

原告のその余の請求を棄却する。

訴訟費用はこれを四分し、その一を原告の負担とし、その余を被告の負担とする。

この判決は、第一項に限り、仮に執行することができる。

事実

第一申立

一  原告

1  被告は、原告に対し金四、〇〇〇、〇〇〇円、およびこれに対する昭和四七年一月一日より支払済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。

2  訴訟費用は被告の負担とする。

3  仮執行の宣言。

二  被告

原告の請求を棄却する。

第二主張

一  原告の請求原因

1  昭和四四年一二月一三日午前七時五〇分頃、倉敷市児島柳田町一、八八九番地先県道上で、原告が自動二輪車(原付二種)に乗車し、道路左端より一メートル位のところに一時停止中に、被告運転の普通乗用車が南進して右車両の後部に追突した。

2  右事故により原告は、右大腿骨骨折、右下腿骨骨折、右膝関節(脛骨)骨折の傷害を負い、昭和四四年一二月一三日より昭和四五年四月三〇日までの一三九日間、倉敷中央病院に入院し、また昭和四五年四月一五日から昭和四六年一二月一三日までの六〇八日間(実治療日数一一三日)、藤井整形外科病院に通院し、それぞれ治療を受けた。しかし原告には、右下肢の膝関節に著るしい運動障害を残す後遺障害を生じた。

3  被告は、前記加害車両を所有し、同車両を自己のため運行の用に供していたもので、本件事故により生じた原告の損害につき賠償責任がある。

4  損害

(一) 治療関係費 合計八九七、二三六円

(1) 病院支払治療費

(イ) 倉敷中央病院分 六一〇、〇三八円

(ロ) 藤井整形外科病院分 三八、三〇〇円

(2) 付添看護費 一七九、九二八円

付添看護を要した期間は昭和四四年一二月一三日より昭和四五年三月三一日までの一〇九日間である。

(3) 入院雑費 四一、七〇〇円

一日あたり三〇〇円として入院期間一三九日間の分である。

(4) 通院交通費 三七、二七〇円

藤井整形外科病院に通院するため要した交通費である。

(二) 休業損害 合計一、九五〇、〇〇〇円

(1) 原告は、不動産取引主任者の資格を有し、本件事故当時月一〇万円を下らない収入を得ていたが、本件事故のため昭和四四年一二月一三日から昭和四六年三月一二日までの一五ケ月間全く収入を得ることができなかつた。右期間中の休業損害は一、五〇〇、〇〇〇円である。

(2) また原告は、昭和四六年三月一三日から同年一二月一二日までの九ケ月間は、月五万円を下らない収入の減少があつた。右期間中の休業損害は四五〇、〇〇〇円である。

(三) 免失利益 二、七八三、一六〇円

原告は、本件事故により前記後遺障害を残し、二七パーセントを下らない労働能力を喪失した。右症状固定の昭和四六年一二月一二日当時、原告は五六歳であり、少くとも六七歳までは就労可能であるから、原告の得べかりし利益の喪失額は二、七八三、一六〇円である。

(四) 慰藉料 三、〇〇〇、〇〇〇円

原告は、本件事故により前記2のとおりの傷害を負つた。原告の右苦痛に対する慰藉料は三、〇〇〇、〇〇〇円を下らない。

(五) 弁護士費用 三〇〇、〇〇〇円

原告が本件請求に要した弁護士費用のうち被告に負担させるのが相当な金額である。

以上、損害金合計は金八、九三〇、三九六円である。

5  原告は、本件事故による自賠責保険金一、五一〇、〇〇〇円の給付を受けたので、前項(一)ないし(四)の損害の内金に充当した。

6  よつて原告は、被告に対し、前記損害金合計額より前項の金員を控除した残金七、四二〇、三九六円の内金四、〇〇〇、〇〇〇円、およびこれに対する本件事故ならびに損害発生の日の後である昭和四七年一月一日より支払済に至るまで民事法定利率年五分の割合による遅延損害金の支払いを求める。

二  請求原因事実に対する被告の答弁

1  請求原因1の事実のうち、原告が一時停止中に被告の車両が追突したとの点は否認するが、その余は認める。

2  同2の事実のうち、傷病名は認めるが、その余は不知。

3  同3の事実は認める。

4  同4項の各事実はいずれも争う。

原告は、入院中も従業員に指示するなどして不動産業の業務を続け、治癒後も後遺症の存在は業務に支障を与えておらず、休業損害ないし逸失利益の発生は認めるべきではない。

5  同5の事実は認める。

6  同6は争う。

三  被告の抗弁

1  本件交通事故は、被告に過失はなく、原告の一方的過失によつて発生したもので、被告運転の普通乗用車には構造上の欠陥、機能上の障害がなかつたもので、被告には損害賠償責任がない。すなわち、

被告は、前記車両を運転し、幅員約六・九メートルの道路左側部分を時速三五ないし四〇キロメートルで進行していたが、その左前方をバイクで進行していた原告が前方約六・五メートルの地点でいきなり右へ進路を変更したため、被告において急制動の措置をとつたが間に合わなかつたもので、被告には過失がない。一方原告は、進路変更の合図は勿論のこと右後方の安全を確認することなく、被告の進路に割込み転回しようとしたもので、原告の過失により本件事故が発生したものである。

2  仮に前項の主張が認められないとしても、原告の前記過失が本件事故の主因をなすものであるから、大幅な過失相殺がなされるべきである。

四  抗弁事実に対する原告の答弁

抗弁事実はいずれも否認する。

原告は、バイクを運転して時速一〇ないし一五キロメートルで事故現場付近に差しかかり、走つてきたそのままの状態で一時停止し、目的地を確認しようとしていたもので、原告の右側方を数台車両が追い抜いて通過した後、被告の車両が原告の車両後部に追突したものである。

第三証拠関係〔略〕

理由

一  昭和四四年一二月一三日午前七時五〇分頃、倉敷市児島稗田町一、八八九番地先県道上で、原告の運転する自動二輪車(原付二種)と被告の運転する普通乗用車が衝突し、右事故により原告が右大腿骨骨折、右下腿骨骨折、右膝関節(脛骨)骨折の傷害を負つたこと、被告が右普通乗用車を所有し、これを自己のため運行の用に供していたものであること、以上の各事実については当事者間に争いがない。

二  そこで先づ、本件事故の態様について判断する。

1  右争いのない事実と成立に争いのない甲第二〇号証の一、二、甲第二二号証の一、二、甲第二三、二四号証、甲第三〇号証、甲第三一号証の一、二、甲第三二、三三号証、甲第四八号証、乙第二号証、乙第四ないし七号証、証人福田栄の証言、原告ならびに被告の各本人尋問の結果を総合すると、以下の事実が認められる。

(一)  本件事故現場附近の道路は、南北に直線に延びる平坦なアスフアルト舗装道路で、見通しはよいが、車両の通行はかなり多い所である。道路の幅員は、六・九メートルであり、南行車線と北行車線とを区分するセンターラインがあり、その南行車線の路肩部分を除く有効幅員は三・一メートルであつた。原告の運転していた自動二輪車(原付二種)は長さ一・九メートル、幅〇・七メートルあり、被告の運転していた普通乗用車は長さ三・八五メートル、幅一・四八メートルある。

(二)  被告は、右普通乗用車を運転し、事故現場附近を時速約四〇キロメートルの速度で南進していたが、約一〇メートル位の間隔で先行車両に追従していたもので、北行する対向車も連なつて通行していた。被告は、センターラインとの間を約四〇センチメートルとつて進行していたが、事故現場に差しかかり、前方約一〇・五メートルに、道路左端より約五、六〇センチメートル附近を時速二、三〇キロメートルで進行している原告運転の自動二輪車を認めた。そして被告の先行車が右自動二輪車を追い越して通過したことから、被告も同車を追い越しできるものと軽信し、同車の動静を十分注意することなく進行した。

(三)  原告は、当時、事故現場附近にある三和工業株式会社を訪ねるつもりであつたが、初めての訪問であるため、右事故現場附近に至りそれらしき建物を認め、同社の所在地を確認するため減速し、さらに一時停止をしようとしたが、右一時停止の際、ハンドルをやや右に切り、自車を斜めに道路左端より約一・四五メートル附近の所まで進出させた。その時被告は、原告の自動二輪車を自車進路前方に認めて急制動したが間に合わず、被告の普通乗用車は、その左前部を原告の自動二輪車右側部に衝突させ、右自動二輪車を約五メートル押して停止した。そのため、原告の右足を斜め右後方より乗用車の左前部が圧迫し、原告に右大腿骨骨折、右下腿骨骨折、右膝関節(脛骨)骨折の傷害を与えた。

(四)  右事故により、事故現場の道路には、被告の普通乗用車のスリツプ痕がセンターラインにほぼ平行に二条(センターラインから約〇・四メートルのものと約一・六五メートルのもの)が残され、また衝突後自動二輪車が押されて生じた擦過痕が生じた。

2  以上の各事実が認められる。原告は、道路左側端より約一メートルのところを時速約一〇ないし一五キロメートルで進行してきて、そのままの状態で一時停止したもので、右にハンドルを切つたことはなく、被告は原告車に後から衝突してきた旨主張し、原告の供述調書(甲第二三号証、甲第三〇号証)の記載および原告本人尋問の結果にはこれに副う供述もあるが、前掲各証拠に照し措信できない。すなわち、(イ)本件事故現場に残された被告車両のスリツプ痕から判断される衝突地点は、道路左端より約一・四五メートルの所であり、同地点まで原告の車両が進出していたこと、(ロ)道路の幅員と普通乗用車の幅から、原告が事故前に道路左端より約一・四メートルの所を通行していたとは考らえれないこと、(ハ)被告車両は、そのスリツプ痕のとおり、左転把をしていないこと、(ニ)加害車両、被害車両および原告の傷害の部位等から自動二輪車の右斜め後方からの衝突であると認められること、(ホ)原告の右転把は、被告の先行車が通過した後と認められること、など客観的に認められる事実に符合しないためである。他に右認定に反する証拠はない。

三  右認定事実により被告の責任ならびに過失相殺について判断する。

1  被告は、右普通乗用車を所有し、これを自己のため運行の用に供していたのであるから、自賠法三条により、右自動車の運行によつて生じた本件事故の原告の損害を賠償する責任がある。

2  被告は、本件事故が被告に過失はなく、原告の一方的過失によつて発生したもので、右普通乗用車にも構造上、機能上の障害がなかつたのであるから、被告には責任がない旨主張する。しかしながら、右認定事実によれば、被告は、前車との車間距離が十分でなかつたため左前方を進行する被害車両の発見がおくれたうえ、対向車が連続して進行し、右側部分にはみ出して通行することはできなかつたのであるから、同車を追い越す場合には、十分な左側部分の幅員がなく、同車の僅かな進路変更によつても接触の危険が予想されるので、同車の動静を十分注視し、あらかじめ警音器を鳴らして自車の接近を知らせ、事故の発生を未然に防止すべき注意義務があるのに、これを怠り、警音器を鳴らさなかつただけでなく、同車の動静注視をせず、漫然と同一速度で追い越そうとしたため、原告が減速のうえ一時停止しようとし、一時停止の際にやや右にハンドルを切つて右に進出してきたことに気付くのが遅れ、急制動したが間に合わなかつたというのであるから、被告の過失は明らかであり、その責任を免かれうるものではない。この点についての被告の主張は失当である。

3  しかしながら、原告は、片側三・一メートルの道路のほぼ一・四五メートル附近まで右ハンドルを切つて進出したものであるが、その際、後方確認を行なわず、右ウインカーによる合図もしていなかつたもので、速度を落し、一時停止をするためであつたとはいえ、その落度は大きく、原告の過失が本件事故の誘因をなしたことも明らかである。右原告の過失を考慮すれば、被告の負担すべき損害賠償額を定める際に、その六割をもつて被告の賠償すべき額とするのが相当である。

四  そこで次に、原告に生じた損害について判断する。

1  治療関係費

(一)  成立に争いのない甲第一ないし三号証、甲第六、七号証、甲第二〇号証の一、原、被告各本人尋問の結果ならびに調査嘱託の結果によれば、原告は、事故当日の昭和四四年一二月一三日から昭和四五年四月三〇日までの一三九日間、前示傷害の治療のため倉敷中央病院に入院し、同病院に六一〇、〇三八円を支払つたものであるが、右支払額には、原告が使用した特別室使用料も含まれるところ、右使用料は一日一、〇〇〇円程度と推認されるので、右のうち、入院期間中の右使用料一三九、〇〇〇円を控除した四七一、〇三八円が本件事故と相当因果関係のある損害と認める。また、成立に争いのない甲第四、第五号証、甲第八、九号証、原告本人尋問の結果によれば、原告は、右倉敷中央病院に入院中の昭和四五年四月一五日から昭和四六年一二月一三日までの間、総社市の藤井整形外科病院に通院して加療をうけ、その実治療日数は一一三日であつたが、その治療費としては三七、八〇〇円を要したことが認められる。診断書料五〇〇円は、右治療費に含まれないうえ、ただちに相当因果関係のある損害といえるものではない。

(二)  成立に争いのない甲第一号証、甲第七号証、甲第一〇ないし一六号証、弁論の全趣旨により真正に成立したことが認められる甲第三九ないし四七号証、原告本人尋問の結果によれば、原告は、倉敷中央病院に入院加療中の昭和四四年一二月一三日から昭和四五年三月三一日までの一〇九日間、その症状のため付添看護を必要としたが、原告は、付添婦および付添看護婦などを家政婦斡旋所より斡旋をうけ、その費用ならびに斡旋手数料の支出を相当額要したことが認められるが、右のうち一日あたり二、〇〇〇円の範囲内である原告主張の一七九、九二八円については相当因果関係のある損害と認めることができる。

(三)  また原告は、前示のとおり、一三九日間倉敷中央病院において入院していたが、その間、少くとも一日あたり三〇〇円の割合による雑費の支出を余儀なくされたことは明らかであり、右合計四一、七〇〇円は相当因果関係のある損害と認める。

(四)  前示四、1(一)の事実と成立に争いのない甲第一七、一八号証、原告本人尋問の結果によれば、原告は、昭和四五年四月一五日から昭和四六年一二月一三日までの間、実治療日数にして一一三日間、総社市の藤井整形外科病院に通院したが、右下肢障害のため総社駅より同病院までの通院にはタクシーの使用を余儀なくされたが、同区間のタクシー料金は一二〇円であるので、右に要した通院費用は合計二七、一二〇円と推認され、右は本件事故と相当因果関係のある損害である。原告は、三七、二七〇円を要した旨主張するが、右認定の範囲を超える部分については証明がない。

よつて、原告の本件事故による傷害の治療によつて生じた損害は、右(一)ないし(四)の合計七五七、五八六円である。

2  休業損害ならびに逸失利益

(一)  原告は、本件事故による傷害のため休業した損害の算定にあたり、本件事故当時、不動産取引主任者の資格を有し、不動産業を営んでいて、月一〇〇、〇〇〇円を下らない収入があつた旨主張するところ、原告本人尋問の結果によると、原告は、丸井不動産研究所の商号で不動産取引業を営み、自ら営業にあたる他は、女子事務員を置くのみで、原告の休業によりその営業収入を失つたと述べるのであるが、事故前の営業帳簿の備付もなく、取引高や必要経費も明らかでなく、月純益を一〇ないし一五万円と記憶するのみで必ずしもその証明は十分でないうえ、不動産取引業の収益の特殊性も考慮すると、原告の収入については必ずしも明らかではないので、賃金統計にもとづく平均給与額をもつて認定するのが相当である。右の方法による収益の認定によれば、不動産取引による収益率が評価されないものの、被告が指摘するとおり、入通院による加療中の業務の継続による収益性の問題もあるので、総体としては必ずしも不合理なものとなるものではない。そして原告は、本件事故当時五五歳の男子であるところ、昭和四四年の労働省「賃金構造基本統計調査報告」による五〇歳代の男子労働者の平均給与月額は七一、八〇〇円であり、その年間賞与額は二二八、七〇〇円であるから、その年収額を一、〇九〇、三〇〇円とみなすのが相当である。

(二)  成立に争いのない甲第一ないし五号証、甲第七号証、甲第三五号証、甲第三八号証および原告本人尋問の結果によれば、原告は、本件事故後昭和四五年四月三〇日まで入院し、その間ほぼ完全に稼働できなかつたものとみることができ、その後同年五月一日より昭和四六年一二月一三日まで藤井整形外科病院に通院しながら加療と機能回復につとめたが、右下肢の膝関節に著るしい運動障害を残す後遺障害を生じ、右障害は自賠法施行令別表および労働能力喪失率表による第一〇級一〇号に該当する程度のもので労働能力喪失率二七パーセントと判定されるものであることが認められる。右事実によれば、原告は、(イ)事故時から退院時の昭和四五年四月三〇日までの一三九日間は、前記(一)の収入の一〇〇パーセントを失い、(ロ)その後同年五月一日から通院による加療と機能回復訓練をやめた昭和四六年一二月一三日までの五九二日間は、一〇〇パーセントの労働能力喪失状態より二七パーセントの労働能力喪失状態に漸次回復した過程であるので、その平均労働能力喪失率六三・五パーセントの割合で前記(一)の収入を失つたものとみることができ、(ハ)その後原告は、就労可能年限である六七歳に至るまでの一一年間、前記(一)の収入の二七パーセントの得べかりし利益を失つているものとみることができる。

甲第三五、三八号証の記載によれば、原告の右症状固定は昭和四五年七月一日頃と認められるが、原告は、その後も通院機能回復訓練に努めていたことが認められるのであり、労働能力の回復としては右機能回復訓練をやめた昭和四六年一二月一三日をもつて能力回復時と認定することを妨げるものではない。

(三)  そうすると、前記(イ)の入院期間中における休業損害は、年収額一、〇九〇、三〇〇円の入院期間一三九日分にあたる四一五、二一〇円(計算式は別紙1のとおり。)であり、前記(ロ)の回復過程における休業損害は、同様に年収額一、〇九〇、三〇〇円の五九二日分の六三・五パーセントである一、一二二、九一九円(計算式は別紙2のとおり。)である。また、前記(ハ)の逸失利益については、年収額一、〇九〇、三〇〇円の二七パーセントについて、稼働期間一一年間分の中間利息をホフマン式(年毎)により控除して現価を求めると、二、五二八、七六二円(計算式は別紙3のとおり。)となる。

したがつて、原告に生じた右休業損害、逸失利益の合計額は四、〇六六、八九一円である。

3  慰藉料

原告は、前示1、2のとおり、本件事故による傷害により入通院による加療を要し、更に前示の後遺障害を残した。右傷害により、原告が多大の苦痛を豪つたことは容易に認めることができる。右苦痛を慰藉する金額としては、二、二〇〇、〇〇〇円をもつて相当と認める。

五  以上のとおり、原告に生じた損害の合計額は七、〇二四、四七七円であるが、前示三のとおりの過失相殺を斟酌し、その六割にあたる四、二一四、六八六円が被告の賠償すべき責任の範囲である。そして、原告が本件事故による自賠責保険金一、五一〇、〇〇〇円を受領したことについては当事者間に争いがないのであるから、原告は、右金額を控除した二、七〇四、六八六円を、被告に対し賠償請求することができる。したがつて、原告が本件請求に要した弁護士費用については、その約一割に相当する二七〇、〇〇〇円をもつて被告に負担させるのが相当な金額というべく、原告は、これを加算した二、九七四、六八六円につき損害賠償請求権がある。

六  したがつて、原告は、被告に対し、右損害金二、九七四、六八六円およびこれに対する右損害発生日の後である昭和四七年一月一日より支払済に至るまで民事法定利率年五分の割合による遅延損害金の支払を求めることができる。よつて、原告の本訴請求は右の限度において理由があるのでこれを認容し、その余は失当であるから棄却し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条、九二条を、仮執行の宣言につき同法一九六条を各適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 大内捷司)

(別紙) 計算書

1 1,090,300円×139日/365日×100/100=415,210円

2 1,090,300円×592日/365日×63.5/100=1,122,919円

3 1,090,300円×27/100×ホフマン係数8.5901=2,528,762円

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例